目ぇかけ手ぇかけ言葉かけ。

17年取材・制作 アスパラ農家 前川 耕市

そりゃ、きついこと・つらいこともあるけど、
俺の言う通りにしたら、
必ず儲けさせてやる。心配するな。

アスパラ農家

前川 耕市

まえかわ・こういち|昭和30年9月生まれ。
現「平戸アスパラ部会」部会長。
アスパラ以外の作物に関しても、平戸農業界きっての優良経営者。

世間のイメージを覆す

「農業は儲からない」というイメージが世間では定着し、就農者も年々減少傾向にある。そのため、国としてもしきりに「儲かる農業」を謳い、様々な策を講じる。 農家側としても「農家は慎ましく」という暗黙のルールでもあるかのように、たとえ儲かっていたとしても、「儲かってるよ!」と胸を張って言う人には滅多にお目にかかれない。
そんな中「農業で儲けて何が悪い」「俺の言う通りにしたら、必ず儲けさせてやる」と豪語するのが、農職人・前川耕市氏だ。
昭和30年に平戸の兼業農家に生まれた前川さん。父親が出稼ぎ先で怪我をしたことをきっかけに、跡を継ぐべく地元高校を卒業後はすぐに就農。父親のように兼業・出稼ぎはせず、農業だけで食べていくという決意で。

伸びるアスパラと収入

就農当初は、その当時平戸でブームだったメロンを始めたが、度重なる台風の影響を受け、昭和62年、イチゴに切り替えた。それから5年ほどイチゴを作り続けるものの、夏場の収入を補うために、農協から勧められたアスパラを導入。知識も技術もなく手探り状態で始めて3年ほどが経った頃から徐々にコツをつかみ、アスパラだけで年300万円ほどの収益を得たことから、本格的にアスパラに注力し、今に至る。
「アスパラの最大の魅力は値段。ひと頃ほどではないですが、今でも年間を通じて大体キロ単価千円から千五十円、良い時で千百円くらいで安定しています。ちゃんと仕込みをしておけば、収穫時には次から次に生えてきますし、収穫したものはイチゴのように出荷調整が必要ありませんので、そのまま選果場に持っていくだけです。こんなに楽で儲かる作物は、私が知る限り他にはありません。」と前川さんは言う。

苦も楽も子育てに似て

とはいえ、もちろん苦難もある。「台風はしょうがないとして、一番は病気が出た時は辛いですね。少しの管理ミスが原因で出てしまいます。でも、それを機に水をやったり栄養剤を散布したりを繰り返すことによって、ちゃんと元に戻ります。子供が点滴を受けるようなもので、手当てをするとまた元気になる。まさに子育てと一緒ですね。」

育てよ儲けよ若者たち

現在はJA平戸アスパラ部会の部会長として、常に単収トップを維持する優良経営者。指導農業士でもある奥さんの靖代さんと共に研修生を毎年受け入れるなど、後進育成にも積極的だ。
前川さんは研修生にいつもこう言う。「農業で儲けろ」と。
ここ15年間の前川さんの年収は約一千万円。44年というキャリアと、アスパラ・イチゴに加え、直売所向けのブドウも手掛ける努力の賜だが、ことアスパラに関しては、新規就農者でも4年間精一杯やれば、年収500万円は可能だと前川さんは断言する。「現在は生産技術も進歩し、販売先も確立しています。その条件下で、私の経験や指導を受け入れて、諦めずに、精一杯やれば大丈夫です。保証します。」

農で活性化は平戸への報恩

前川さんには“儲け”にこだわる明確な理由がある。必死に働いて稼ぎ、何とか二人の子どもを都会の私立大学に通わせることができた。しかし、子どもたちは大学卒業後、平戸に帰ってはこなかった。「今は都会に出て行っても、収入があまり望めない時代です。しかし、平戸でアスパラをやれば、自分の思い通りに稼げて、好きな事に使える時間もたっぷり取れるので、今の若者にはすごく向いていると思うんです。平戸への恩返しではないですが、若者に平戸に定住してもらうために、アスパラで儲けてもらって、子だくさんの家庭が増えたらと願っているんですよ。若者が増える事により地域が活性化しますから。そのために私はこれからも“儲かる農業”を追求・指南していきたいと思います。」

  • 前川さん 「自分の可愛い子どもにも同じようにするやろうもん!」と、サービスショット。お茶目な一面も見せてくれた
  • 研修生に指導する前川さん 研修生に指導する前川さん。研修生たちは「前川さんは面倒見の良い、よく世話を焼いてくれる親父みたいな人」と口を揃える。
  • 靖代さん かけがえのないパートナー、靖代さん。指導農業士として、研修生のみならず、平戸市の農業の活性化・発展に大きな役割を果たしている。
  • アスパラの豚肉巻き 前川さんのハウスで栽培されたアスパラの豚肉巻き。平戸のきつい土を押しのけて出てきた分、アスパラは力強く旨さも凝縮しているのだとか。
  • 研修生たちとの楽しい食事 住み込みで働く研修生たちとの楽しい食事のひと時。以前は海外(パラグアイ)からの研修生を受け入れたことも。

動画紹介

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